Cha-ble_Vol19
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小濵 まず初めに、なぜこの時期に経営統合が必要だったかということ。上田 1つには将来に対する危機感です。食品スーパーマーケットだけでなく、コンビニエンスストアやネットなど今後予想されるあらゆる業種業態を巻き込んだ経験したことのないような競争。その中で食品スーパーが生き残っていくには1社ではできないことに挑戦し、将来に展望を見出すことが重要です。 そして2点目は、攻めの統合をするなら今が好機ということ。往々にして統合はどちらかの体力が落ちて救済や吸収というケースが多い中で、カスミもマルエツも業績が堅調なこの時期に統合できるのは、非常に良いタイミングだと考えています。小濵 体力も体質も健全な企業同士の統合ということ。藤田 危機感という点では、今までのビジネスのやり方が通用しなくなり始めているという切迫感を近ごろ感じています。変革やイノベーションと叫ぶのは簡単ですが、1社単独で既成概念を打ち破るのは難しい。 その意味で組織や資本を当初から1つに統合する合併では既成概念を引きずるだけで何も変わらないだろうと。今回のように異なる文化の企業同士が独自性を担保しながら1つのホールディングスのもとでやっていくケースは珍しいかも知れませんが、化学変化を起こしさらに強い企業体に生まれ変わるのではないかという期待感が私の中にはあります。小濵 共同持株会社は比較的新しい統合のスキームですが、うまくいっているケースばかりではありません。我々が成果を上げるためには何が必要でしょうか。上田 往々にしてホールディングスのための事業会社という関係性になりがちですが、それでは事業会社の良さが出せません。重要なのはホールディングスの立ち位置。お客さまや事業会社のためにあるホールディングスでなければなりません。小濵 U・S・M・Hは参画する事業会社の自主自律を尊重するというのが基本理念ですが、そのために重要なことは何だと考えますか?藤田 そもそもU・S・M・Hは参画する事業会社を通して新たな価値を創造していくことが使命ですが、実現には事業会社同士が情報公開をしっかりとやって透明性を高めること。互いを信頼し磨き合えるオープンな仕組みを築くことが重要です。上田 食習慣や食文化と密接に関わるスーパーマーケットは地域密着が非常に重要です。地域によってお客さまニーズも商売のやり方も違ってくるし、都内でも地下鉄で1駅違えば売れるものが変わる。地域密着を突き詰めていくと最終的には個店対応が重要という結論になるのですが、そこだけを強調してしまうと、一方では大きなチャンスを失うことになる。そこがまさにシナジー(相乗効果)だと思っています。小濵 一方で地域性や店の独自性を追求しながら、他方でシナジーを出していくのは難しいと周囲は言いますが、今回の経営統合でどんなシナジーを期待していますか?藤田 2つあります。1つはスーパーマーケット事業の核となる地域のお客さまとの関係づくり。ここはビジネス環境や企業文化の違いから事業会社ごとに特色のあるやり方があると思いますから、自主自律を尊重しながら互いの長所を学び磨き合うことで新しい価値を創造していきたい。 もう1つはそのための体力強化。これまで別々にやっていたことを1つにまとめることで生まれるコストメリットをいかに生かせるか。事業会社の自主自律を尊重しつつ、1社ではできない価値創造を実現することでシナジーを生み出せると思っています。小濵 U・S・M・H傘下のスーパーマーケットの店舗数は483店舗(4月末現在)。現在、6千400億円の売上高を2020年度に1兆円、1千店舗にするというビジョンを掲げています。常識的に考えれば、非常に困難な道のりです。どうやって実現しますか。上田 今の3社だけで実現するには確かに困難ですが、理念に賛同し新たに参画してくれる企業を我々は歓迎します。そのためにもU・S・M・Hに参画することで得られるご利益を実績で示すことが我々の使命だと考えています。藤田 マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の3社がここ2〜3年でどれだけ会社を磨けるか、厳しい競争環境の中でいかに足元固めをできるか、その成果が問われるのだと思います。健全、自主自律が統合の活力にカギは地域密着とシナジーオープンであることの重要性

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