Cha-ble_Vol20
10/16

10立っているかで存在価値が問われる時代です。小濵 地域に役立っている大学や企業は若い人たちにとって魅力的なブランドだと思いますが、どのようにしてアピールすべきだと考えますか?米倉 私は大学で教鞭をとる前、外資系企業でシステムエンジニアをやっていたのですが、人材育成という点では企業と大学に共通点があります。それは現場主義と経験主義が非常に大事であるということ。自分でやってみせて、言って聞かせて、させてみる、そして最後に褒めて人を伸ばす。エクスペリエンス(いい経験)が重要ですね。小濵 おっしゃるように体験を通して成長を実感することが重要ですね。カスミでは新入社員が東日本大震災の被災地、陸前高田市(岩手県)で体験学習を行います。祭りの支援を通して地元の人たちと交流する体験学習ですが、参加した新入社員は「つながりの大切さを感じた」「役立てたことがうれしい」と口々に言います。米倉 茨城大学では今年4月から「茨城学」という授業を1年生の必修にしています。内容は茨城県の歴史、文化、産業などについて各界の講師から学び、ディスカッションやフィールドワークを通じて地域の実情を知って課題解決の視点を身につけるのが目的です。本県出身者が生まれ育った地域を学ぶことは大切ですし、県外出身者も卒業後に出身地に戻ったときに地域が抱える共通の課題と向き合ったときにノウハウが役立つでしょう。一つの地域を深く学ぶことは、あらゆる地域で通用する人材を育てることにつながります。小濵 茨城県人は意外と地元を知りませんよね。私は県外から来て15年になりますが、社内では一番の茨城通と自負しています。県内各地で見聞きしたり体験する機会が多いからですが、茨城学は地域にとって将来大きな財産になると思います。米倉 茨城県は全国2位の農業県、工業の面でも全国トップクラス。モノづくり先進県として本来ならもっと力を発揮していいのに、残念ながら魅力度調査では3年連続最下位。原因はブランドになっていないからです。 いかにブランドをつくるかが課題ですが、例えば、食がテーマなら安全安心だけでなく、茨城でしか味わえないエクスペリエンス(いい経験)をセットにして提供するサービスが非常に重要だと思います。質の高い茨城の食によって観光人口(ファン)が増えれば、ゆくゆくは定住人口の増加につながる可能性も小さくはないでしょう。小濵 地域の活性化には、その土地ならではの魅力を発掘し発信していくことと同時に、次の世代に伝えていくことが重要です。エクスペリエンス(いい経験)を積むことが人を成長させ地域で活躍できる人材を育てることにつながる(米倉)目指すべき人材育成茨城大学社会連携センタ−長(副学長)。1954年生まれ。名古屋大学大学院修了後、81年同大大学院工学研究科情報工学専攻を終了し、外資系企業の米国勤務を経て91年より茨城大学の教壇に。93年同大助教授、2005年より教授、工学部長を経て、2014年より現職。研究テーマはインターネットを介した遠隔教育システムの開発ほか。工学博士。茨城県出身。米倉 達広さん(よねくら・たつひろ)経験でつながる人・モノ・地域

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です