Cha-ble_Vol20
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11 例えば、地域で長く愛されている食べものは地場産品として産業と結びついていますし、食文化や食習慣はその地域で暮らすうえで魅力の一つとなり得るものです。あのお店に行けば地域の逸品が何か見つかる、そういう話題で誰かと会話ができる…、これからのスーパーマーケットは地域の中でそうした憩いや出会いの機会を提供する場になる必要があると思っています。米倉 ビジネスの現場でも教育の現場でも、これからは地域との関係づくりが鍵を握ると思います。そのときにインターネットがバラバラだった人々の知見を結びつけたり、地域の特色を生かした商品をタイムリーにエクスペリエンス(いい経験)につなげるといった役割を担うことになるでしょう。小濵 誰かとつながることによって「いい経験」をすることは、人の成長にとって非常に有意義だと思います。米倉 ええ。時には失敗したり、傷ついたりすることもありますが、それを含めて学んだエクスペリエンス(いい経験)を積ませてあげることが人を成長させ、地域で活躍できる人材を育てることにつながると思いますね。小濵 失敗して困ると、誰に知恵を借りたらいいんだろうと必死に考えますからね。米倉 それこそネットワーク(人脈)づくりの原点ですよね。人が成長するために必要なのは自分自身の努力と同時に、人とのつながりです。今の若い人たちはソーシャルメディアを使って情報交換することには長けていますが、情報が多すぎて人とのつながりが疎かになっています。ソーシャルメディアを情報入手の道具と誤解している人がいますが、本来は人がつながるための道具であることを若い人たちには覚えてほしいですね。小濵 つながりによっていい経験が得られるということでしょう。米倉 ええ。顕著だったのが東日本大震災でした。あのとき人々がものすごい勢いでつながって得た経験が、復興の原動力になったのですね。小濵 常総の水害では多くの道路が寸断され、支援物資を積んだカスミのトラックが立ち往生しました。そんなとき、ある従業員が避難所に物資を届けたいので「誰か通れる道を教えてほしい」とツイッターでつぶやいたら、「この道が通れるぞ」と返ってきて物資を届けることができました。つながりが目の前の課題を解決していくのです。米倉 いいお話ですね、それは。自分の情報が困っている人の役に立つことを実感することが人を成長させるのです。小濵 喜ばれるともっと何かしたい、役立ちたいと願うのが人です。それを発揮する場に導くのが人材育成であり、そのために企業と地域が互いに歩み寄ることが大切でしょうね。米倉 まさにその通りです。小濵 その意味でも社会連携センターの役割は大きいですね。ありがとうございました。(2015年10月8日、茨城大学にて収録)株式会社カスミ代表取締役会長。1941年生まれ。1965年神戸商科大学卒業。株式会社ダイエー入社。 マルエツ副社長、ダイエー専務取締役などを経てカスミ入社。2002年から2010年まで代表取締役社長、2010年より会長職。大阪府出身。小濵 裕正(こはま・ひろまさ)役立ちたいと願う人を導くのが人材育成そのために企業と地域が互いに歩み寄ることが大切(小濵)対談が行われた茨城大学のキャンパス

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