Cha-ble_Vol20
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9小濵 人口減少は茨城県も例外ではなく、2000年の299万人をピークに減少傾向が続いています。特に首都圏への転出、県内では県北から県南への移動が見られます。米倉 東日本大震災が拍車をかけました。風評被害もあって県北から県南へ、県南から県外へという動きが顕著でした。小濵 スーパーマーケットのビジネスは口の数と胃袋の大きさで決まります(笑)。人口減少でこの2つが減り続けると、十数年後には茨城県をベースにしたビジネスがむずかしくなると考えています。米倉 一方で人々が求めるものも変化しています。モノからサービスへ、さらにサービスよりエクスペリエンス(いい経験)を求める人が増えてきていると感じます。 ですから、学生に対しても茨城大学で学んで人生のプラスになった、楽しい思いができたという経験値を増やしていくことが大学の魅力アップにつながると考えています。小濵 スーパーマーケットも、モノを売る段階からサービスを提供する段階を経て、今や我々が店を出て地域社会の中に積極的に入っていくことが求められる時代です。米倉 大学も学内教育はもちろんですが、一方で研究や地域貢献によって社会に役立つ知識や知恵をどれだけ作れるかが期待されています。そうしたエクスペリエンス(いい経験)を社会に向けて発信していくことが地域活性化の鍵になるだろうと思っています。小濵 東日本大震災を境に人々の中につながりや共感という価値が高まってきました。企業は社会との共感性を高め、従業員は地域の課題を我が事として捉え解決に取り組むことが求められています。事業による地域貢献の場づくりが経営者の責務だと感じています。米倉 モノやサービスからエクスペリエンス(いい経験)へという変化はあらゆる産業に起きています。例えばかつて車は性能や価格で選びましたが、今はその車から得られる経験やライフスタイルを重要視します。 大学選びでも教育の質に加え、そこで学ぶことの楽しさや人生の思い出づくりという視点からファンづくりを考えていくことが必要と感じています。小濵 そうした流れを受け、地域社会と大学を結ぶ窓口として茨城大学社会連携センターが誕生したと聞いています。狙いは何ですか?米倉 従来、大学における地域との関係づくりは企業との共同研究などで特許や研究資金の獲得などを進める産学連携が中心でしたが、他方で地元自治体や住民からは地域活性化やまちづくりの取り組みに大学や学生に参加してほしいという声がありました。こうした地域連携によって、地域活性化への施策提案や協定の締結などを行ってきましたが、産学連携と地域連携の窓口を一本化することで、より緊密で効率的な連携を目指す目的で社会連携センターが創設されました。小濵 スーパーマーケットは地場産業ですから、我々のところにも地元自治体からさまざまな協力要請があります。最近多いのが災害時の物資供給に協力する防災協定。現在カスミは約30の地方自治体と防災協定を締結していますが、今回の関東・東北豪雨による大規模水害でいち早く支援物資を提供できたのも成果の一つと考えています。 また、現在カスミは買い物に不便な過疎地域を対象に行政と連携し茨城県内の3市59カ所(2015年2月末現在)で移動スーパーを行っていますが、近ごろその中の一部地域で食育を始めました。こうした地域の高齢者は買い物が不便というだけでなく、食べるものに偏りがあり栄養バランスが良くないのです。その状態を放置したままモノだけを届けても地域の課題解決には至らないという考えから今回の取り組みも始まりました。米倉 地域住民が欲しいのは食べものではなく、バランスのとれた食事というサービスなんですね。小濵 事業化は簡単ではありませんが、買い物弱者対策の糸口になればと期待しています。米倉 地域連携は短期的な利益には寄与しないかもしれませんが、ブランド価値の向上という視点から見ると中長期的な価値は非常に大きいと思います。 大学も共同研究に代表される産学連携の方が短期的にはお金にはなる。しかし中長期的に見て大学のブランド価値を輝かせるのは地域連携であると私は信じています。 地方創生の取り組みにしても、今年何かを提案したから来年地域が活性化するかというものではなく、継続する中で地域社会の信頼を得てブランドにつながっていくのです。小濵 経営資源はヒト、モノ、カネ、情報と言われてきましたが、加えてブランドがある。これからはブランド価値をいかに向上させていくかが経営の最重要課題と言っていいでしょう。商品がよいのは当たり前、差別化という点ではその企業や店が地域にどのように貢献しているか、どんなところで役縮小する人口と胃袋地域の魅力を高める連携茨城大学図書館

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