Cha-ble_Vol24
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んであげるという手もあります。すでにギフト商品で対面型タブレット販売を店舗で始めている事例もあり、このモデルが日本の高齢化社会には合うのではないかと思っています。小濵 移動スーパーで好評なのは「欲しい物はありますか?」という御用聞き営業です。対話はネットにはないリアルならではの価値ですからね。藤元 扱っているのが食品ですから、お客さまとの接触頻度の高さは非食品業態とは比べものになりません。 高頻度のコミュニケーションがあるということは食品スーパーにとって大きな強みです。店舗があって、人がいて、そこにデジタルを持ち込めば無限の倉庫になるわけで、地域密着スーパーの可能性はそこにあるのではないかと思います。選ばれる食品スーパーの条件藤元 ソーシャルメディアの利用者が増える中で、「インスタ映ばえ」が話題になっています。人の目を引く写真が撮れる場所やモノを指す言葉で、若い女性を中心に広まっています。 たとえば食品メーカーさんに多いのはインスタコンテスト。自社の商品を買った消費者がどう料理したかを投稿する写真コンテストですが、結果的に企業にはどういう食卓になったかをマーケティング情報としてデータ化できるメリットがあります。小濵 さまざまな方法で取得した購買後の行動データを店舗のマーケティングにその後どう活用できるかがポイントでしょうね。藤元 あらゆるものをネットにつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)時代は売ることが最終目的ではなくなります。顧客が商品をどう使い、どう満足したかまで追跡することが必要になるのです。 それらを活用し、どうすれば顧客の行動を変容させられるか、どんなプロセスで価値を最大化できるのかを見出すために、顧客の行動データは今後企業にとって最も重要なデータになります。 「何を買ったか」より「なぜ買ったか」に注目して意思決定を行う組織に生まれ変われるかどうかが競争の鍵になっていくと思います。小濵 かつては効率よく販売することが競争力でしたが、加えて今後はお客さまとのつながりが競争力や差別化の要素になりますね。 カスミは今、「ちょっとヨリミチ」したくなるような店づくりを進めています。あのお店に行くと何かおもしろそうな体験や発見がありそうだから行ってみよう。そういうスーパーがこれからは生き残る時代だと思っています。藤元 一番大切なのはワクワク感だと思いますよ。そのお店に行くと新しい体験ができそうな予感。 もう一つは、そこに行くとコミュニティの人たちと顔を合わせられるという安心感。地域密着のローカルスーパーならなおさらです。これからの食品スーパーに求められるのはその二つだと思います。小濵 エンタテインメントとコミュニティがキーワードになりそうですね。ありがとうございました。(2017年9月27日、カスミつくばセンターにて)(株)カスミ取締役会長。(株)ダイエー、(株)マルエツ副社長、(株)ダイエー専務取締役などを経て(株)カスミ入社。2002年から2010年まで代表取締役社長、2010年に代表取締役会長。2017年より現職。小濵 裕正(こはま・ひろまさ)食品スーパーはもっと料理をつくる楽しさを体験できる場になる必要がある小売りのマーケティングモデルのパラダイムシフトこれまでこれからどのような商品を販売するか今売れている商品を品揃え他店にはない魅力的な商品を品揃えどのような価格で販売するか特売品の安さを最大の魅力として打ち出し短期的な売上アップを目指す価格より価値を打ち出しファンとして継続的に買ってもらうことを目指すどのような宣伝で販売するか特売品の安さを中心に不特定多数のお客さまにチラシでアピール購買履歴や行動履歴の分析からお客さまごとに適切なタイミングで情報を提供どのような場所で販売するか人が来る立地の良い場所に出店するリアル店舗、ネット販売の役割を明確にして最適化いつでも、どこでも、だれとでも今だけ、ここだけ、あなただけ9
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