Cha-ble_Vol25
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地域のシンボルとなるアリーナ小濵 先ごろ筑波大学は、7〜8千人収容のアリーナをつくば駅近くに建設する計画を発表されましたね。永田 実は10年程前から着想はあったのですが、実現には至りませんでした。しかし、大学は勉強する場所であると同時に地域の皆さんが楽しめるアミューズメントセンターの役割もあるという考えが私の中にはそのときから変わらずにありましたから、構想は持ち続けていました。こうした施設は大学にとっても、地域にとっても活性化につながると考えています。小濵 立地はつくば駅の近くと聞いています。永田 市役所が研究学園駅の付近に移って以来、つくば駅周辺がさびれてきていますよね。やはり、つくばという都市は駅を降りたら科学都市らしいプレゼンスを感じられる街であってほしいですよね。駅周辺にはエアカーが走っているとか。そんな話は20年も前からあるのに一向に進展しませんが…(笑)小濵 おっしゃるように大型店舗の撤退などで駅周辺の空洞化が懸念される中、「まちなか立地」のアリーナは街づくりの観点からも期待が大きいと思います。 永田 大学スポーツやプロスポーツの観戦はもちろんですが、筑波大学は芸術、情報工学も得意分野ですから、たとえば、AIやICTを全面的に実装し世界のどこかでやっているスポーツの試合やアーティストのコンサートを筑波大学が開発した最新の3Dパブリックビューイングで広く市民の皆さんにも楽しんでいただけるような多目的アリーナにできたらと考えています。小濵 私はつくばに移り住んで18年になりますが、最初はこの街にあまりおもしろみを感じませんでした。大学や研究機関はあっても当時はまだ地域社会との関係が希薄だったし、何より街の中にコアになる施設が見当たらなかった。 つくばの発展や可能性を考えると、この街にアリーナを建設することは、つくばだけでなく、茨城県全体のシンボルとなる施設という位置づけになるでしょう。アリーナの役割も、スポーツ体験を通じた地域活性化など期待感も膨らむと思います。永田 スポーツの価値を私たちはもっと見直していいんじゃないでしょうか。スポーツは世界基準が分かりやすいですし、世界と個人が直結することを肌身で感じられるのが魅力です。 たとえば、サッカー少年はテレビをつければ、バルセロナのあのエースストライカーを見たい時に見られるわけだし、卓球だって、テニスだってそうですよね。ある選手やチームへの応援を通じてホームタウンへの愛着や、自分が依って立つアイデンティティのようなものを感じることができる。 あのイチロー選手は名古屋の人ですが、おそらく野球で育った自分のアイデンティティをシアトルという都市に感じている。だからこそホームタウンに対する愛着がすごく強いのだと思います。 スポーツを通じて子どもたちの地域への愛着やアイデンティティを育てる。そのことに国や地域がもっと力を貸すべきだろうと私は思っています。小濵 つくば市は都市建設から40年以上経過していますから、住民の皆さんにはマイホームタウンという気持ちはあると思うんです。ところが、その発露の場がない。 今年度、カスミは人間愛と地域愛を経営テーマに掲げています。本社を土浦市からつくば市に移して20年になり、ビジネスとしてのホームタウンをつくばに、と考えています。街が少しずつ成熟していく中、産学官が一体になってホームタウンづくりができる時期に来たなと感じています。大学スポーツによる地域活性化の可能性小濵 米国の大学スポーツは、地域住民がアリーナに観戦に訪れるなどプロスポーツ並みの人気と収入があるようですね。永田 アメリカンフットボールとバスケットボールは特に人気が高いですね。大学スポーツが人々の身近にあるのです。その環境を支えているのがNCAA(全米大学体育協会)という組織です。 「学生のために」という理念の下、約1千校が加盟する団体で、全米の大学スポーツが生み出す収益を一元管理し、有名無名、強い弱いに関係なく加盟大学に公平に分配します。これによって各大学は学長をリーダーに、それぞれの理念に沿った形でスポーツの価値を学生や社会つくばエクスプレス(TX)つくば駅近くの職員宿舎跡地に建設中。収容人数7〜8千人規模の室内競技場。用途は大学スポーツ、プロバスケットボール、コンサート、舞台など。筑波大学が開発した3Dパブリックビューイングによるイベント開催も想定。2020年の完成を目指す。筑波大学アリーナ7

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