Cha-ble_Vol25
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に還元していくという好循環が生まれているのです。 筑波大学もスポーツ先進国の米国に倣い、学長直下で運動部をマネジメントする部署(アスレチックデパートメント)を新たにつくり、スポーツの力を活用した大学の価値向上を図っています。小濵 ホームタウンをつくるにはスポーツの価値を地域住民と大学、そして企業が共有する必要があるでしょうね。 カスミも微力ながら筑波大学蹴球部の公認スポンサーとして応援させていただいていますが、これからは企業だけでなく、広く市民の皆さんが応援するための場や仕組みづくりも大切でしょう。 たとえば、クラウドファンディングを活用してファンから寄付を募って、学生アスリートを支えるようなプロジェクトがあってもいいですよね。リターンはお金ではなく、魅力的なスポーツ体験にすればファンは大学スポーツをより身近に感じ、学生アスリートは地域貢献に寄与できる。大学スポーツの産業化は人のつながりや新たなビジネスを生むきっかけになれると思います。永田 さすが実業家ですね。(笑) バルセロナFCが成功した理由は、一部の関係者だけでなく、市民でつくるチームにしたからです。今もバルセロナ市民は自分たちが支えたバルセロナFCに誇りを持っています。 市民には自分たちの好みにチームを変えていく力があるんですよね。それが歴史になっていく。小濵 プロ野球の広島カープがそうですよね。何十年もかけてできた市民球団ですが、広島というホームタウンには、市民が選手を育てる文化や仕組みが根づいています。永田 時間はかかります。つくばも研究学園都市建設から40年、50年経って、いま産学官連携で一緒にやろうという気運がやっと高まってきたのです。どこまで見届けられるか分かりませんが、まず取り組みを始めることが一番重要なのだと思います。目指す大学像、企業像永田 筑波大学は国立大学の中で最初に150周年を迎えます。その歴史は前身の東京高等師範学校に始まりますから、東京大学や京都大学より7〜8年歴史が古いのです。 筑波大学は、つねに他の大学に真似されることをやろうと考えています。アリーナ建設もその一つですが、目的はスポーツ振興にとどまらず、地域に根ざしたスポーツ・芸術・情報技術の拠点づくり。それを自治体ではなく、大学がやるところに新しさがあるわけです。 逆に言うと、誰かがやったことには手をつけない。社会人向けの大学院をつくったのは30年前ですが、当時としては非常に珍しかった。結局、教育研究拠点としてチャレンジャーでありつづけることに存在意義があると思っています。 それともう一つ大切にしているのは、知恵やアイデアを地域で実装することです。たとえば、水害のあった常総市と一緒に新しい土地計画をつくる。地元農家に最新の情報技術を提供してアクティブな農業を提案する。大学の持つ知見やノウハウを地域課題の解決に活用し、つねに新しいことに挑戦していきます。小濵 挑戦と実装。ロマンがありますね。 小売業も単にモノだけを売る時代は終わりました。これからのスーパーマーケットには、地域コミュニティの拠点としての役割が求められています。たとえば、子育て中のママさん同士が交流できる、お年寄りが集まって健康体操ができる。そういう場づくりをしていくことが企業ブランドの価値につながると考えています。 と同時に、カスミは子育てや農業などつねに他の大学に真似されることにチャレンジする。アリーナ建設もその一つです。筑波大学学長東京大学薬学部薬学科卒業。同大薬学研究科博士課程修了。国立遺伝学研究所分子遺伝研究部門助手、東京工業大学生命理工学研究科助教授などを経て2001年筑波大学基礎医学系教授。同大学長特別補佐などを歴任。2013年より現職。専門は分子生物学。永田 恭介さん(ながた ・ きょうすけ)8

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