Cha-ble_Vol26
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ⒸRyoICHIKAWA/JapanGoalballAssociation藤田 ヨーロッパでは自転車競技が国技に近い存在で、日本の相撲中継のようにテレビでも放映されるため、障がい者スポーツを含め多くの人が自転車競技の楽しみ方を知っています。 それに比べると日本ではまだ、自転車競技も障がい者スポーツも市民権を得ていないですよね。スポーツとしての面白さや観戦の楽しみ方などを、我々がもっと伝えていくべきだと思っています。山口 私もそう思います。特に私がやっているゴールボールはルールを知っている人も少ないので、地域の子どもたちを対象にした体験会などで普及活動を行っています。まずは体験して、その楽しさや迫力を多くの人に知ってもらえたらと…。藤田 国際的な競技会やトップレベルのアスリートに注目が集まりがちですが、生涯スポーツとしていつまでも楽しめるスポーツが健常者にも障がい者にも必要ではないでしょうか。まずは「始めてみよう!」と思うきっかけになれたらと思いますし、身近に感じていただけるよう、私も地元のマラソン大会のお手伝いをさせていただいています。山口 生きがいとしてのスポーツってあると思います。障がい者スポーツというと、動ける障がい者だけがやっている特別なスポーツと理解されがちですが、健常者や障がい者の区別なく、スポーツの一つとして楽しんでもらえたらもっと身近に感じてもらえるんじゃないでしょうか。小濵 海外遠征も多いお二人ですが、日本のバリアフリーに関してはどう感じていますか?藤田 施設や設備面ではかなり整備されてきていると思います。 ただ海外と比較してすごく差を感じるのは障がい者への接し方です。過去に海外で出場した国際大会ではボランティアさんがすごくフレンドリーで、障がい者に接するというより自然に人に接するという感じがとても心地良かったのを覚えています。 障がいは人によって度合いが異なりますし、どういう助けが必要かは人によって多様です。「いま必要なことは何か」と想像する思いやりが大切なのかなと思います。小濵 心のバリアフリーですね。でも、駅で白杖を持った人が目の前に現れた時、気持ちはあってもどう声を掛けてよいか分からないということもありますよね。山口 もちろんそうだと思います。幼い頃から障がい者に接していれば別ですが、私自身も15歳まで目が見えていて、いざ自分が見えなくなってみて分かったことがたくさんあります。 障がいの度合いもいろいろなので難しいですが、やはり駅などで勇気を出して声をかけて誘導してくださる方には、いつも感謝の気持ちを伝えています。すごくありがたいなって思います。小濵 心の距離を縮めるために、幼い頃から健常者と障がい者が身近にいる機会が必要なのでしょうね。山口 そう思います。やはり経験が少ないと自然に接するのはむずかしいですよね。藤田 なるべく小さな単位から「場」をつくっていくことが大事かなと思います。たとえば、学校や地域、そして職場のように。地道ですが、障がい者と健常者が一緒に参加して交流できる機会を少しずつ増やしていくことが大切だと思います。小濵 まさに職場は大切な交流の場です。ですから、障がい者だけを閉じ込めてしまうのではなく、健常者と一緒に働くことで社会参加していくことが何より大事です。山口 障がい者にとって働くことは社会に受け入れられることであり、すごくうれしいことです。一方、健常者にとっても気づきや発見があると思います。障がい者はこんなこともできるんだという発見は、一緒に働く環境の中で芽生えていくものだと思います。小濵 いま多くの企業に問題なのは、障がい者はここまでしかできないという固定概念。もう一つは、障がい者の法定雇用率にばかり目を奪われていることです。 大切なのは、社会から見えるところで障がい者に活躍してもらう「場」をつくること。カスミも特例子会社を設立し、知的障がい者と健常者が一緒に野菜の加工をします。微力ですが、仕事を通して誰もが社会参障がい者スポーツを通じコミュニケーションの大切さを子どもたちに伝えたい(山口)1997年茨城県生まれ。15歳で視神経の難病「レーベル病」を発病し視力をほぼ失う。盲学校に進学後、部活動でゴールボールを始め、ユース代表を経て、2020パラリンピック東京大会の日本代表強化指定選手に。現在は大学生活を送りながら講演や競技の体験会なども行う。特技は和太鼓、津軽三味線など。山口 凌河さん(やまぐち ・ りょうが)ⒸRyoICHIKAWA/JapanGoalballAssociation

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