Cha-ble_Vol27
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4岩佐 それじゃあ何年頑張れば覚えられますか?と聞いたら、「俺に15年ついてくれば分かり始める」って。小濵 分かり始める444?岩佐 そう、分かり始める444。 だから、なおさら彼がやってきたことをITでマニュアル化し、新規就農者でも高品質のイチゴを安定的につくれるようにすることが大事だと思ったんです。小濵 一番苦労したのは?岩佐 匠の技術を若い世代に継承するためのコミュニケーション。とにかく頑固な匠でしたから(笑)。 信頼関係をつくる上で、立場や世代のギャップが大きいほど、コミュニケーションが大切になります。人間対人間ですから。小濵 まさに日本社会の課題は、おっしゃった技術の継承にあります。下町ロケットのように、職人の非常に優れた技術があっても伝承されずに埋もれてしまう。農業も同じ。頑固さゆえの技でもあるんですがね…。岩佐 そうですね。だからこそ、リーダーは最後までコミュニケーションを諦めてはいけないと思っています。ひと粒1000円のミガキイチゴ小濵 そもそもイチゴの可能性をどのように感じていたんですか?岩佐 ビジネス面から言うと、国内市場で約2千億円という市場の大きさ。イチゴは日本人が好きなフルーツ40年連続第1位です。小濵 特に女性は好きですよね。岩佐 ええ。もう一つは地域再生という点です。震災直後に200人位の人たちに「この町をどうやって再生したいですか?」と尋ねたら、約7割の人から「イチゴでこの町をもう1回盛り上げたい」という答えが返ってきました。イチゴはこの町の誇りなんです。小濵 ミガキイチゴというブランドでイチゴの生産販売をされていますが、その中にはひと粒1000円という最高クラスの高級イチゴもあるそうですね。岩佐 「ミガキイチゴ プラチナ」という名前で都内の百貨店で販売していますが、商品全体の1%にも満たない量で、主力は高品質でも家庭で購入できるような価格の商品です。 ただ飛び抜けて価値の高い商品をつくれることで、技術的には2番手、3番手の品質も向上し、ブランド全体を押し上げる効果があります。一点突破!イチゴで世界へ小濵 国内だけでなく、海外展開もしていると聞きました。岩佐 インド、マレーシア、ヨルダンに展開しています。小濵 海外展開のきっかけは何ですか?岩佐 震災の翌年、ある企業さんから社会貢献活動でインドの農村開発を手がけないかというお誘いを受けました。「瓦礫しかなかった被災地で美味しいイチゴがつくれるなら、インドでもつくれますよね」と言われて…。 最初はコンサルとして参加したんですが、実際に行ってみると水も電気もない。農村の貧困や格差は想像以上。まるで震災直後の破壊された故郷のようでした。とても見ていられなくて、きちんとコミットしてやろうとハウスを建てたのが始まりです。小濵 東北から一気に世界へ。ものすごく強いメッセージですね。岩佐 震災でゼロになった町がもう一度光り輝くには、やはりグローバルレベルで通用する何かが必要だと思ったんです。 新しさ、面白さ、生産性、テクノロジー、宮城県山元町の農業生産法人株式会社GRA代表取締役CEO東京でITコンサルティング会社を経営する一方、震災後は故郷に雇用を創出できる事業としてイチゴのハウス栽培。ひと粒1,000円の「ミガキイチゴ」は大手百貨店での独占販売や海外輸出も。農業は未経験ながら、農家の栽培ノウハウを分析しITで品質管理。先端施設園芸農業で東北の再生をライフワークとする。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)がある。岩佐 大輝(いわさ・ひろき)国全体が元気やイノベーションを失わないためにも地方の多様性が必要になる(岩佐)制御されたハウス内を飛び回る受粉用の蜂日長時間を調整する暗室システム熟練スタッフが厳しい目で選別する選果作業

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