Cha-ble Vol28
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武蔵野の田園風景が残る東京から一番近い町みよし(埼玉県三芳町)三芳町は埼玉県の南部に位置しています。池袋から電車で30分ほどで近隣の最寄り駅に着く距離なのに、一帯は驚くほどのんびりとした田園風景が広がっていました。ケヤキの大木がトンネルのように続く並木道を北へ向かうと、傍らに茅葺き屋根の古民家。文化財として移築された旧島田家住宅です。案内によれば、約200年前の江戸時代に建てられた富農の民家で、昔は近くの農家の子弟を集めて寺子屋を開いていたようです。元々このあたりは水に乏しく栄養の少ない土地柄でしたが、江戸時代に川越藩主によって新田開発が進められ、「三さんとめ富新田」と呼ばれるようになりました。藩主は開拓農民に井戸を掘らせましたが、思ったほど水が出ず、村人たちはわずかな井戸水を分け合って大切に使っていたようです。いつもは風呂に入れない村人たちは、柔らかいチガヤという草で体の汚れを拭き取る「かや湯」を風呂代わりにする習慣にしていましたが、遠くから歩き続けて疲れ果てた様子の旅人には貴重な水を振る舞ったという言い伝えが残っています。あたりを上空から映した写真を見ると、畑と雑木林と屋敷からなる敷地がまるでパッチワークのように並んで見えます。雑木林の木は燃料用の薪として利用するほか、落ち葉から堆肥をつくるなど、栄養分が少ない土地で農作物を育てるための知恵が詰まっています。落ち葉から堆肥を作る循環型の江戸農法は一帯で今も引き継がれていると聞きました。住宅地の中に江戸時代に開墾されたままの姿が今も残る武蔵野の田園都市。そんな三芳町に、フードスクエアカスミ三芳店がオープンしました。絵=古山 浩一絵=古山 浩一13

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