Cha-ble_Vol29
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7コロナ禍と向き合う小濵 森さんは筑波大学で医学を学びながら、全国の大学生を対象にしたSDGs(持続可能な開発目標)の小論文アワードで、「健康と企業」をテーマに最優秀賞に輝きましたね。おめでとうございます。森 ありがとうございます。小濵 きょうは「健康」をテーマに話し合いたいのですが、その前に、医学生として新型コロナウイルスの問題をどのように受け止めていますか?森 本来ならこの時期は病院実習のはずでしたが、政府の緊急事態宣言が出て自宅待機となり、医学生として何ができるかと考えています。人との接触を減らすことが求められる中、平和で安定した社会があって人は健康でいられることを改めて実感しています。小濵 人類の歴史は感染症との戦いの歴史でもありますが、私は今回の事態が世界の人口爆発に対する自然界の調整のような気がしています。たとえ今回の新型コロナウイルスを克服しても、数十年後には再び新たな脅威が出てくるかもしれません。 それに対し、健康や安全は人間の意志の結果です。カスミでも密閉・密集・密接の「3密」を回避して感染拡大を防ぐため、集客イベントを中止にしたり、店内の混雑状況をホームページで公開するなど安心して買い物ができる店内環境を整備しています。食品の提供を通して生活者の健康や安全に関わる地域のライフラインとして、改めて責任の重さを痛感しています。森 私が医師を目指そうと思ったのは健康に興味があったからです。人間の社会活動の根源は健康にあると以前から強く感じていて、大学入学後も医学だけでなく、仲間と地域の小中学校に出向いて健康教育に関わったり、カラオケ店で心肺蘇生(心臓マッサージ)の体験イベントを開いたり、さまざまな活動を続けてきました。小濵 心肺蘇生の体験イベントですか?でも、なぜカラオケ店で?森 心肺蘇生は倒れた人の胸のあたりを1分間に100〜120回のテンポで強く押しますが、このテンポに近い曲をカラオケで歌いながら訓練用の人形の胸を圧迫し得点を競い合う形式にすれば、経験のない人にも興味をもってもらえるんじゃないかと(笑)。小濵 なるほど(笑)。そうした活動とSDGsの小論文とは関係があるのですか?森 実は大学入学以来、健康に関する活動をいろいろとする中で、いつかその経験を論文にまとめたいと考えていました。健康は社会の資源小濵 私も拝読しましたが、論文ではSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」の達成のために、すべての企業は健康増進に取り組む「オレンジ企業」を目指すべきということを強調していましたね。ところで、「オレンジ」という言葉にはどんな意味が込められているのですか?森 オレンジとは、健康をイメージする色から名づけました。今の日本には過労死、うつ、医療費増大、健康格差などさまざまな社会課題があります。どうすればすべての人が健康になれるかを考えると、健康とは個人だけの責任ではなく、社会全体が協力して整える「社会資源」という認識に変わるべきではないかと思ったのです。小濵 一人ひとりの努力だけでなく、社会全体で健康の環境を整えていく。森 そうです。たとえば、一人暮らしの大学生の食生活が乱れたり、買い物に行けない高齢者が栄養バランスを崩したり、健康に良いと分かっていてもオーガニックは高くて買えないとか…。こうした課題を解決するには、人々の健康を取り巻く環境が良くなることが不可欠ではないかと思うのです。小濵 その環境を整える上で企業に期待するところが大きいと。森 おっしゃる通りです。今日、地球上新聞折込の「カスミ緊急事態宣言」、お客さまと従業員の安全・安心を守るための具体策を明記しました※1)SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。2030年に向けて世界が合意した国際社会共通の目標。カスミも「食育」「食品ロス削減」「リサイクル」「森林再生」「被災地支援」などに取り組んでいます。※2)第5回 住友理工学生小論文アワード※1※2

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