Cha-ble_Vol29
9/16

9❶従業員の健康増進や働き方改革を推進する健康経営を実践する。❷消費者の健康に良い商品やサービスによる競争優位性が利益向上と社会全体の健康増進に貢献する。❸①と②が健康を意識しなくても実現できる。 企業がこの3点を満たすことですべての人が健康に生きるための環境づくりにイノベーションを起こすことができると考えます。小濵 SDGs達成と利益追求は相反するという議論がありますが、両立させるには工夫が必要です。森 どんな工夫ですか?小濵 まずは自分たちの経営資源を分析し、課題の選択と集中を行い優先順位を決める。次に企業単体ではなく、地域の市民や行政を巻き込んで継続する。 たとえば、私たちの食育が長く続けられるのは地域の学校と一緒に取り組んでいるからです。また、買い物に不便な地域の方々の所へ出向く移動スーパーは自治体と連携しています。地域との連携という視点を持つことで、SDGsと企業活動は直結させられるはずです。多様な主体と協働する森 さまざまなパートナーと一緒に障がい者スポーツの啓蒙活動もされているそうですね。小濵 ええ。ボッチャ、ブラインドサッカー、車いすバスケットボール、ハンドアーチェリー、卓球バレーなどを体験できるイベントを地元の大学、自治体、企業の皆さまと協働で開催しました。 障がい者と健常者が一緒に参加できる「場」を提供することで、新しい出会いや広がりが生まれます。カスミ単独ではできないことも多様な主体と協働すれば実現できる。それもSDGsの意義と言えるでしょう。森 一人じゃできないことも誰かと一緒なら実現できるって素敵なことですよね。私もみんなの健康に役立つことをしたいと思い、大学近くのカラオケ店の店長さんに相談したら、「うちのお店でやりなよ」と協力してくれて心肺蘇生のイベントが実現しました。小濵 次はカスミと一緒に何かやりましょう!森 本当ですか? 私たち学生はアイデアがあっても、実現するための「場」が少ないのです。お客さまや従業員さんなど、企業さんが持っている多様な資産や「場」を活用させていただけたらフィールドワークにはとても大きなメリットになります。小濵 SDGsの目的は本業を通じた社会課題の解決にありますが、それは同時に参加する企業や地域社会の人々に「場」を提供することでもあり、そこに企業の役割もある。そうした機会を通じSDGsが浸透していくことが望ましいのですが、そのためにも意識改革はとても重要だと考えています。森 企業の文化や風土とも関わりますね。何か変化は表れていますか?小濵 持続的成長と利益追求の両立は難しいと言われてきましたが、お客さま、株主さま、従業員の意識は変化しています。利益さえ出れば、健康のことは考えなくてよいという論理は通用しません。森 健康を意識して商品を選ぶのではなく、意識せずに欲しいものを選んだら健康につながるのが理想だと思います。そんなオレンジ企業なら健康や福祉だけでなく、働きがいや技術革新、そして経済成長も実現できるはず。未来に選ばれるSDGs企業になり得ると思います。小濵 健康という多くの人たちの欲求を満たすためにも、私たちは商品やサービスはもちろん、さまざまな活動を通してお客さまや従業員に新しい価値を提供し続けることが大切です。それがカスミの役割であり、SDGsの達成にもつながると思っています。ありがとうございました。(2020年4月29日、茨城県つくば市の筑波大学キャンパス内にあるカスミ筑波大学店にて収録)株式会社カスミ取締役会長2000年株式会社カスミ入社。 2002年から2010年まで代表取締役社長、2010年に代表取締役会長。2017年より現職。2018年5月から2020年5月まで日本チェーンストア協会会長。小濵 裕正(こはま・ひろまさ)地域連携の視点を持つことでSDGsと企業活動は直結できる(小濵)(この写真は両者の距離を十分にとった上で個別に撮影しています)対談は屋外で2メートル以上離れて実施しました

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る