Cha-ble Vol. 31 2020年6月
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9りです。なので、その地域に合った形に仕上げていくことを一番大切にしています。 例えば、静岡では地元の銀行さんがバス停になっていたり、郵便局や駅がバス停になっている地域もあります。そして茨城はカスミさんをはじめ、県庁、市役所、JA直売所など企業と行政が連携しています。バス停は人とモノが集まる結節点であり、その先に新しいコミュニティができたらいいなぁと…。山本 バス停になるメリットはカスミにとっても大きいですよ。鮮度のよい野菜が集まれば、そこにはお客さまが集まる。そうするとさらに良い商品が集まるという循環が生まれます。 それだけではありません。仕事をする人たちの意識が変わります。新しい仕組みを導入すると、最初はたぶん「面倒くさい」と思う。今までのビジネスと違いまの力を発揮できないようなシステムでは持続可能な社会にはならないですよね。山本 まさに、食は農業のおかげです。加藤 その農業と生活者を最前線でつなぐのが小売業の皆さんですから、私たちはカスミさんと一緒にやさいバス事業を継続することで生産者と利用者の双方に利益をもたらす価値創造が可能になると思っています。山本 ありがとうございます。ところで、やさいバスは地域地域で、やり方が少しずつ異なるようですね。加藤 そうですね、地域のさまざまな人たちが参加してつくっていく仕組みなので、それぞれに特徴があります。山本 地域ごとのチームで取り組む狙いは何ですか?加藤 やさいバス自体はあくまで仕組みで、私たちの最終目的はコミュニティづくすから。しかし、それが仕事のやり方や意義を変えていくことなんです。そして、おいしさや健康は何物にも代えがたい価値であることを再認識する。われわれは今、前に進むために新しい扉を開けようとしている。問われているのは依存型ではない、自主自立型の商売ができるかどうかです。地域の人と社会の健康山本 やさいバスさんとカスミは、コンセプトや目指す方向性が非常に近いと勝手に思っています。加藤 それは光栄です。山本 日本は2027年ころに高齢化のピークが来ると言われています。少子化もさらに進み、社会は大きく変容すると思いますが、この先のやさいバス事業と社会との関わり方をどのように考えていますか?加藤 やはりコミュニティが基本になると思います。やさいバスが地域に根づくことで「住みやすくなった」と思ってくださる方が一人でも多く増えること。野菜をつくる人、売る人、食べる人を一つのサイクルとしてつなぎ、信頼を紡ぐコミュニティをつくるのが夢です。山本 一企業ではなし得ない社会課題も、企業や行政など多様なパートナーが連携し新しい価値創造を目指して活動していくことが重要だと思います。加藤 本当ですね。私は「利他」という考え方を大切にしています。自分だけのためではなく、誰か他の人のためになることをほんの少し考えて動いてみる。70億の人たちがそんなふうに考えて動いたら、世界は少しずつ良くなっていくだろうと。SDGsってそういうことかなぁと思っています。山本 人も企業も、そういう生き方を目指さないと持続可能な社会は実現できない時代です。そのための基盤づくりを、カスミはこれからも食と地域を基本に続けていきます。加藤 昔から「医食同源」と言われますが、日本でも糖質の過剰摂取による栄養失調が増えています。健康を失ってから食生活を見直すのではなく、カスミさんに行けば、誰もがいつでも採れたて野菜を、「鮮度よく、早く、手軽に買えるよね」という状態をつくることが地域の人たちの健康につながる。意識しなくても目の前にあるものを食べていれば健康で長生きできるのが理想だと思います。山本 地域の生活者と社会を健康にすることこそ、スーパーマーケットの使命です。きょうはありがとうございました。(2021年4月30日、カスミつくばセンターにて収録)株式会社カスミ代表取締役社長兼ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社取締役デジタル本部長。中央大学法学部卒。2013年カスミ入社、14年常務取締役上席執行役員ロジスティック本部マネジャー、17年専務取締役上席執行役員、19年ビジネス変革室マネジャー、ビジネス変革室ビジネスリモデルマネジャーを経て20年より現職。石川県出身。山本 慎一郎(やまもと・しんいちろう)企業や行政など多様なパートナーと連携し持続可能な農業を守りたい(山本)カスミの「やさいバス」コーナー(フードスクエアカスミつくばスタイル店)

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