Cha-ble_Vol32
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麹の柔らかな香りとまろやかな塩味、その奥にほのかな甘みが潜むやさしい味わいの湊屋みそ。笠間稲荷神社のそばで創業以来百十余年、地域の宝として愛され続けてきました。長年のお客さまからは「うちは代々湊屋さん一筋だよ」、初めて食べたお客さまからは「やっとこの味に巡り会えた」という声があがります。たくさんの人を魅了する麹みそはどのようにつくり上げられたのか、代表取締役の湊啓子さんに聞きました。「先代の父は、麹の様子が気になって夜中に何度も室むろを見に行くような真面目な人でした。とにかくお客さまに喜ばれるお味噌をつくりたい一心で研究を重ね、たどり着いたのが、追い麹・再仕込み製法です。寝かせて時を待つことも大切で、大豆・塩・麹が混ざりあって味が馴染むまで、半年から1年かけて熟成します。味噌蔵に住み着いた菌も働いてくれて、湊屋の味ができました」詳しい製法は企業秘密ですが、仮に公開しても誰も真似しようとは思えないほど手間がかかるものだそうです。麹をたくさん入れている割にあまり粒が見えないのも、ひと手間かけているから。お味噌汁にするとふわふわと麹が泳ぎますが、飲むときに喉の邪魔になることはありません。カスミとの取引は先代(4代目)のころからで、すでに40年以上が経ちます。地元笠間店から始まり、現在では県央を中心に県南や県北の27店舗で販売。麹みそのほか、1〜2年熟成させた赤みそ、小麦やナスを用いたひしお(金山寺味噌)が売り場に並んでいます。場所は常温の棚ではなく、必ず冷蔵ケースです。「うちのお味噌には添加物が入っておらず、菌が生きています。常温でも保存できますが、熟成が進んで色が濃くなったり、発酵が進んでガスが発生したりすることがありますので、冷蔵での保管が適しています。ご家庭でのおすすめは、冷蔵庫の野菜室。また冷凍室に入れると菌が眠った状態になり、凍らないのでヘラですくってお使いいただけます」20年前に桜川市へ工場を移転。昔より重労働が減り、温度管理も楽になったと言います。「今後も先代から受け継いだ製法で、手抜きをせず、お味噌と会話しながらつくり続けていきます」と語る湊さん。変わらぬ味を提供し続けることで、お客さまの笑顔を守っています。代々受け継がれた味を守る湊屋5代目・代表取締役の湊啓子さん(中央)と従業員の皆さん10研究熱心だった先代の湊博さん。昭和20年代に三輪トラックをいち早く導入(茨城県笠間市)湊屋みそ湊屋味噌醸造所

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