Cha-ble_Vol32
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13なつかしいボッチの風景と出会える落花生の里間もなく10月も終わろうとしていた平日、JR総武本線の八街駅を訪れました。駅前には巨大な落花生のモニュメント。千葉県北部の八街市は、日本の落花生の8割を生産している落花生の街なのです。お昼時。駅前の通りを渡って料理店に寄ってみると、そこは中庭のあるモダンな和空間。「創業明治36年。房総の奥座敷八街の皆様に愛されて百余年」と案内にあり、旅人宿から始まった由緒正しい老舗割烹のようです。敷居が高いかなと少し躊躇しましたが、献立を見るとサラリーマン向けのランチメニューはいたってリーズナブル。しかも、定食のごはんが落花生おこわ、箸休めには殻付きの茹で落花生、落花生の里の「小さな旅」は上々のスタートです。店を出て少し車を走らせると、住宅地の中にのどかな田園風景。そして、この土地ならではの秋の風物詩、畑に積み上げられた落花生ボッチが点在する風景と出会いました。ボッチは収穫後の落花生を積み上げて乾燥させる、人の背丈ほどある円筒状のかたまり。こうして1カ月ほどゆっくり寒風にさらすことで、落花生の旨味と甘味が増すのだそうです。上にのせる稲わらでつくった雨よけの笠の形が、時代劇で浪人がかぶるボッチ笠に似ていることからボッチと名付けられたという説もありますが、近ごろは青いビニールシートがまるで帽子のよう。ボッチの装いも時代とともに変わるようですね。専門店でお土産のおすすめを聞くと、「千ちばはんだち葉半立」という品種をすすめられました。「小粒ですが、甘味、コク、香りが最高。落花生は健康食品ですから毎日少しずつ食べるといいんですよ」と笑顔で元気な店員さん。そんな八街にカスミは2店舗。地域のお客さまに支えられ、今日も元気に営業しています。やちまた(千葉県八街市)絵=古山 浩一

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