Cha-ble_Vol32
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山田 おっしゃるように、世界では水資源に配慮した持続可能な食料生産へのニーズが高まっています。また、2050年までに現在の1・7倍の食料が必要になると言われていて、将来の食料不足が地球規模で懸念されています。 こうした食料問題の解決のために植物工場は重要なキーテクノロジーであり、新しい農業のカタチだと思います。山本 都市近郊の狭い場所でも効率的かつ安定して新鮮な野菜を生産できるのが植物工場のメリットですよね。これからのサプライチェーンは、小規模な植物工場の拠点をエリア内に複数展開することで、物流による二酸化炭素の排出を低減することも可能になります。山田 産地と消費地が近づくことで消費者は鮮度と安定を手に入れられます。一方、供給する側はフードマイレージ(食料の輸送距離)や物流による環境負荷を低減できます。これからの企業には、生活の質も上げながら環境負荷も下げられる提案を事業化していく、サステナブルな経営が求められます。それには少ない資源で効率よく生産を最大化する技術を使うことが重要です。山本 植物工場は照明、空調、水の循環設備などで電気を使用しています。「畑の野菜に比べてエネルギーをたくさん消費するからサステナブルではないのでは?」という疑問にはどう答えますか?山田 植物工場がエネルギーを多く必要なのは確かですが、ここ数年だけでも、使用するエネルギー量はかなり減ってきています。利用する電気を再生可能エネルギーでまかなったり、二酸化炭素の排出量を工場全体として減らすなどを継続的に取り組むことで、サステナブルな野菜生産を実現できると考えています。協業で目指す製造小売山本 「グリーングロワーズ」はまだテスト販売の段階ですが、インスタグラムのフォロワー数が立ち上げて間もないのに3万近くになりました。これは単に商品への関心というだけでなく、その背景にあるコンセプトやビジョンへの共感でもあるととらえています。 来年にはカスミの本社から近い茨城県土浦市に工場が完成し、工場長はカスミの従業員が務めます。私たちカスミは製造小売として、プランテックスさんの最新の技術力を使い、安定した食料供給を目指して一歩ずつ着実に進化しようとしています。従業員一人ひとりにもその進化を肌で実感してもらえると思います。山田 土浦工場は近未来の農業をイメージしたデザインで、見た目にもかなりインパクトがありますから期待してください。ぜひ植物工場という新しい食料生産のカタチに関心をもっていただいて、一緒に楽しみながら取り組みに参加していただければと思います。山本 ありがとうございました。(2021年11月20日、千葉県船橋市にあるプランテックスの植物工場にて収録)9サプライチェーンが都市近郊に植物工場を拠点展開すればCO₂排出の低減が可能になる(山本)1959年7月24日生まれ。2013年3月カスミ入社、14年5月常務取締役上席執行役員ロジスティック本部マネジャー、17年3月専務取締役上席執行役員、18年3月ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスICT本部長(現任)、19年3月ビジネス変革室マネジャー(兼務)、ビジネス変革室ビジネスリモデルマネジャー(同)を経て20年3月代表取締役社長に就任。山本 慎一郎(やまもと・しんいちろう)「グリーングロワーズ」のレタスを使ったサンドウィッチテスト販売が行われているフードスクエアカスミ学園店(茨城県つくば市)

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