んぱりは いむ う ららなすねかんつぽょしょう杜とじ氏のふるさとでもある。銘酒は酒造好適ばふ令和6年能登半島地震から半年が経過し、多彩な産物を中心にした復興の動きが盛んに報道されている。加賀百万石前田藩のお膝元だけに、海産物から野菜、日本酒と山海の産物に恵まれ、九谷焼や輪島塗といった伝統工芸品も、豊かな食文化の一端を担って発展、継承されてきた。また日本酒造りの職人集団である能登米と清澄な水に厳しい冬期の寒さが加わって生まれる。北陸新幹線の開業以来、金沢駅には高級料亭が念を込めた、高価にして豪勢な弁当が並んでいる。私が貧乏旅行で回った半世紀前には「どじょうの蒲焼弁当」は四、五百円で、竹の皮に包まれた松まう任駅の「あんころ餅」(圓えち八)は百円硬貨でお釣りをもらった記憶がある。前田藩では七月一日になると冬の間氷ひろ室に蓄えていた氷を江戸の徳川家に献上した。この故事から六月の末になると金沢の「柴しね舟小こで出」や「森もち八」といった菓子店には氷に見立てた氷室饅頭が並び、多くの市民がこぞって口にする。加賀特産の小坂れん煮にといった伝統ある加賀料理を口にするこっとこんが出回る夏季には、れんこんのでんぷんから練り上げた蓮は根羹が「森八」の店頭に並ぶ。地元の産物を大切にする愛着と美味しく口にする感謝の念が無ければ、郷土の銘菓も続かない。とができる。唐というのは卯の花(おから)で、鯛を背中から開き、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、ギンナンなどと炊いたおからを詰めて蒸し上げる。腹を合わせた二尾を一金沢市内の料亭では、鯛の唐かむ蒸しや治じぶ部皿に盛りつけ、婚礼の祝膳には欠かせない。る。長崎伝来の卓しく袱料理に影響を受けたのだろう。ある。オムライスの上にエビや白身魚のフラチャップかタルタルソースを掛ける。摩訶不する石川県人も多い。ムやナンプラーに似た調味料の「いしる」もルポを読んでいたら、お正月のご馳走を盛っていたとあった。ごく日常の生活が一瞬のうちにがれきの下になったことを思うと、天関西の「睨にみ鯛」や愛知の「鯔い饅頭」に通じ 治部煮は鴨肉に小麦粉をまぶして、特産のすだれ麩や野菜とともに炊いた料理で、味は筑前煮に近い。日本料理には珍しく小麦粉を用いるのが特徴だ。 金沢発祥で「ハントンライス」なる洋食がイ、から揚げやトンカツが載り、トマトケ思議な料理だ。能登のソウルフードと称揚 東南アジアの国で生まれた魚ぎ醤のニョクマ加賀地方の特産で、食文化の豊かな重層性を物語っている。 災害の現場に足を踏み入れた新聞記者のたと思われる輪島塗の重箱が道端に転がっ災の恐ろしさと無念が込み上げてくる。能登の味。しげかね・あつゆき1939年東京生まれ。文芸ジャーナリスト。朝日新聞社社友。元常磐大学教授。日本文藝家協会、日本ペンクラブ会員。著書に『食彩文学事典』(講談社)『淳ちゃん先生のこと―渡辺淳一と編者者の物語』(左右社)『落語の行間 日本語の了見』(左右社) など多数。12
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