chable37
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日本でしか造れない「日の丸ウイスキー」を造るの循環として、ビールをつくる過程でろ過した原料をえさにまぜて豚を育て、生ハムやソーセージにする。それだけでは肉を使いきれないのでとんかつ店をやる。ビールの原料である麦の裏作につくったそばが使いきれないのでそば屋をやる。それだけなのです。かがつくったソーセージやピザを仕入れてまでビールを売ろうという気はありません。ところに見えるものをつくる」だけです。店舗のしつらえ、デザイン、プロモーションの仕方も木内さんはユニークですよ。業も、決して押し付けでなく、自然なところに木内さんの価値観を感じます。塚田 木内 我々は食の循環を事業にしているだけで、誰自分たちの「あるべき姿」を徹底し、「目指す事業のポジショニングが明確です。商品や先程おっしゃっていた食の循環を大切にする事ケチだから捨てられないだけですよ。(笑)塚田 木内 塚田 木内 そんなことはありません。実は我々もポジショニングを明確にした店を出したくて、BLΛNDEという新業態をつくりました。例えばそこに行けば、本格的なパスタを楽しめる。休日のブランチには焼きたてのクロワッサンやピザを。生ハムやチーズと合わせ、その場で一杯飲めるバーもある。買い物なしでもお客さまが行きたくなるような店づくりを目指しました。発想の転換ですね。忙しいお客さまにとって買い物は苦痛。だから、いかにショートタイムで効率よくショッピングできる店にするかという視点で工夫するのが、従来のスーパーマーケットの考え方です。それを一旦リセットして、全く逆の発想でつくったのがBLΛNDEです。長時間滞在したくなる、ワクワクする買い物体験ができるスーパーマーケット。サインも、レイアウトも、しつらえも、従来のカスミとは全く変えました。売り手側の発想ではなく、ユーザーの方を向いたビジネスに変える。間違いなくマーケットの範囲は広がると思います。私は、ユーザーの方を向いて「何か変わったことをする会社」がいいと思っています。筑波山が塚田 塚田 木内 塚田 見えるこの場所に八郷蒸溜所を建設すると私が言ったら、「こんな山の中に一体誰が来るの?」と周囲は反対しました。しかし、この風景と出会った瞬間、「行ってみたい」と思う人が必ずいるはずと私は思いました。特別感がありますよ、ここからの筑波山は。私はずっとこの山を反対側から見て育ちましたが、ここの風景は格別です。ユネスコの無形文化遺産に日本の伝統的な酒造りが登録されました。この25年、アメリカに通って仕事をして感じますが、アメリカ社会は食の情報に貪欲です。例えば、「日本のある町の、ある味噌がおいしいらしいが本当か?」なんて聞かれて、日本人も知らないことが話題になっています。ネットの影響も大きいと思いますが、大量生産大量消費に慣れた日本人の画一的な情報より、海外の人の情報の方が多様なことに気づきました。それだけに、海外向けの戦略ではニッチがうけることを学びました。例えば、1千年前から日本にある福ふくれ来みかんの話を海外でするとみんな驚くんですが、日本人はあまり関心を示しません。なるほど。私は先日、伊勢神宮に参拝したときに神様にお食事をお供えする厳かな儀式ローカルと世界        4ビールやウイスキーの原料となる小麦や大麦の一部は地元茨城産を使用、自社で製麦工場も所有しており、風土を生かした妥協のない酒造りが続く貯蔵庫内の6,000樽で熟成する日の丸ウイスキー(右)対談の前に八郷蒸溜所の中を見学(左)公民館だった建物を改築した八郷蒸溜所は左右対称のシンメトリー構造が美しい木内 敏之さん(きうち としゆき)1963年茨城県生まれ。86年木内酒造入社、家業を継承。96年常陸野ネストビールの醸造を開始。現在、約40カ国で販売。2020年に八郷蒸溜所を新設、国産原料を用いた「日の丸ウイスキー」を製造している。

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